心情発露にうってつけの日

パンドラの箱のような、そんな世界に生きていたという気づき

ジャニーズの件から見えてくる摩訶不思議JAPAN

BBCによる「ジャニー氏の未成年に対する性行為暴露」は日本国内を動揺させたと思う。

 

そのあとの岡本カウアン氏の告発もジャニー氏=性加害者としての印象を更に強め、事務所側も遂に長年の沈黙を破った。*1

 

www.nikkei.com

 

 

これまでジャニーさんが「そういった性癖のある人」という認識は、少なくとも一度はジャニオタになったことのある人間ならばあっただろう。

まさかここまで非道いとは思わなかったが・・・。

 

一般人である私達ですらその認識だったのだから、ジャニーズ事務所内ひいてはメディア業界では殊更周知の事実だったに違いない。

 

これを業界側がスルーし続けてきたのはなぜなのか。

はたまた少年たちもそういった環境であるにも関わらず逃げ出そうとも思わなかったのはなぜなのか。

 

BBCの取材はその点において非常に興味深いものだった。

 

私が見たのはyoutube上にアップされている短い動画のみだが、それだけでも欧米の感覚と日本の感覚の差異を感じ取るには十分だ。

思うになぜ「被害」が拡大・継続してきたかに関しては、世界的には当たり前じゃなかったことが日本では当たり前だったという一点につきる。それが良いのか悪いのかは一旦置いておこう。

 

 

この「当たり前(イデオロギー)」というのが、矛盾に対しての抵抗感のなさ――その根っこに愛国主義があるんじゃないかと私は思っている。

もちろんこれは無意識的な話で、実際にこんなことを街なんかで話したら笑われそうだ。愛国ってwwwてね。

 

動画内ではこの一連の被害の原因が「恥の文化」ではないかと語る場面がある。

これは確かに日本人特有だ。

似たような言葉として「同調圧力・事なかれ主義・長いものには巻かれろ、出る杭は打たれる」などわんさか出てくる。尚、これらはあまり良い意味では使われない。

 

この国の不思議なところは、民主的であるかのような外面で実際は君主制のような体制が敷かれているところなのではないだろうか。

一番わかり易いのが政治の世界。半分以上が自民党なのだから、これのどこが民主的なのか、考えてみればそもそもおかしい。さらに言えば立憲民主党も疑似自民のようなものだから野党としてカウントしていいかも怪しい。

こうなると論争するだけ無意味。国会にも緊張感がなくなり、自民党ありきの政策が進むこととなる。

もっと身近な例を挙げてみる。

結婚式は教会で挙げる一方で、葬式はお寺だ。食事風景だって日本食だけでなく、イタリアン、フレンチ、中華・・・などバラエティに富む。

 

「日本人たるものこうだろう」というイデオロギーがなんなのか改めて考えさせられる。

要するに日本人って信念とか信条のようなものが意外と弱いんじゃないだろうか。「善悪の区別」が曖昧にもなりがちなのかもしれない。ただこれがこの国の短所だとも思わない。

 

 

ただ、この矛盾を成立させるために一役買っているのが「愛国主義」でこれが少し厄介の種なんじゃないかと私は思う。遡れば明治維新になるが、天皇が絶対であるという教育を徹底的に施したその名残が今もあるのではないだろうか。

 

これもよく言われることだが、日本社会は横より縦の関係のほうが強い印象にある。欧米諸国ならばフラットにいけるところ、日本だとひんしゅくを買うこともある。

すなわち目上の者が白といえば黒でも白になるのだ。

 

今回のジャニーズの件に関して一番興味深かったのが、絶対的存在であるジャニー氏に逆らえず泣き寝入りをしていたジュニアの構図――無理やりそういった行為をしていた訳ではなかったという点だ。

被害を受けた筈の側が、むしろその行為を肯定的に受け止めていたところにある。BBCでもそこに言及していた。

 

 

 

それが「グルーミング」と呼ばれていた行為。

グルーミングとは、搾取される側がその相手とまるで特別な関係にあるかのように思ってしまう環境を搾取する側が作り出すこと――BBC NEWS JAPANより引用

 

となるならば、愛国主義を更に解体するとそこから見えてくるのは「自己責任・自己犠牲」という言葉。

「他人のせいにしない」というのは我々日本人なら刷り込みを受けてきているであろうこの文句。

「私が好きでこうしている」「こうなったのは私のせいだから」「あの人は悪くない」

こうして自己犠牲の精神を尊ぶ。それで正しいかのように社会も回る。

トップが「させられている」を「している」に変換させてしまうほどのカリスマ性がないとまず成立しないが、うまくハマるとまさに一種の帝国が生み出される。

 

 

 

すなわち今回の騒動で言うならば、ジャニー氏とジュニアたちは雇用主と労働者というよりも「君主と臣下」のような関係なのではないか。

そしてこれはジャニーズ事務所に限った話でもないだろう。性被害とは別の形で悪しき文化が横行していてもおかしくない*2

 

ではその幼気な少年を守るべきだったのは誰か。紛れもない周りの大人達だったはずである。

キング・オブ・ポップと言われたマイケルジャクソンの子どもに対する性虐待疑惑に対しては、世界中で大スキャンダルになった。

今まさに同様のことが起きているが、日本のメディアが十分にこのことを報じているかというと疑問が残る。報道の自由とはいずこに?こんなときのマスメディアじゃないの?

結局彼らも例外なく「長いものに巻かれている」のである。

公平公正などどこ吹く風。

 

 

 

 

日本という国は民主主義の皮をかぶっているだけであり、蓋を開けてみると絶対的君主の側面が強い。

正直国民に主権があることを実感するほうが少ない。皆お上から言われることを「へぇへえ」と聞くばかり。

当然だが、私自身もそういう気質がある。それを今回の件で痛感させられた。

 

 

日本以外もそんなもんだと思っていたが、BBCの取材者の表情と取材内容を鑑みるにだいぶこの状態は奇異的らしい。

 

この騒動は日本という国をグローバルに見るいい機会だ。

「良いか悪いか」「責任の所在」などではなく*3、当たり前の日本という話にまで広がると更に本質が見えてきそうな気がする。

 

少なくとも確実に変わるであろうことは、これまで定番化してきた男の子に対しての「あらぁ、将来はジャニーズ?」なんて発言は戦慄を生むんだろうな。

 

BBC、故ジャニー喜多川氏の加害について取材 言葉を詰まらせる元ジュニア - YouTube

グルーミングとは……性的被害専門のセラピストに聞く ジャニーズ事務所取材のBBC記者 - YouTube

 

*1:正確には揉み消せなくなった

*2:少し前で言えば、舞妓さんの告発や情報番組で芸人がペンギンの池に落ちたのも同様かなというのが個人的見解

*3:加害者側は亡くなってますしね